看護師が施すエンゼルケアの実態

入院患者が亡くなった際には看護師が遺体にエンゼルケアを施し、外見ができるだけ生前の姿に近づくよう整えます。看護師が手がけるエンゼルケアは、主に点滴や人工呼吸器の挿管を外し、手術痕や傷口を綺麗に塞ぐことです。このほかに、亡くなった方の顔にメイクして顔色を良く見せたり、鼻の穴などから体液が漏れ出さないよう綿を詰めたりします。遺体から体液などが流出しないよう死後処置するのは、遺族や葬儀屋に付着して感染症を防ぐためです。ただし、メイクを施しても数日経てば、変色や変形が生じることは大抵避けられません。遺体の姿勢を整えるために開いた口を閉じさせたり、手を組ませたりする結束バンドなどの使用も、変色や変形に繋がることから行われなくなりました。

エンゼルケアで重要なことは、保冷剤などを使って遺体を冷却することです。遺体を適度に冷やせば、液体の流出に加え変形や変色なども抑えられるでしょう。そして、遺体を生前の姿に留めるうえで最も効果的な方法は、エバーミング技術と言われています。エバーミング技術とは、脈管へ薬液を注入することにより、遺体の腐敗の進行を止めて衛生を保つ方法です。エバーミング技術は、エンバーマーと呼ばれる特殊な資格が必要です。医療行為を施せる看護師であっても、この資格がないと原則としてエバーミング技術は行えません。エンゼルケアは看護ケアの1つですが、遺体の保存や衛生管理の面で葬儀屋に頼ることも多くなっています。